自称リハビリテーションの行方と必要性
自称リハビリテーションという言葉を聞きなれない方が多くいらっしゃると思いますが、これは日本医師会総合政策研究機構が作成した「公的保険外・医療周辺サービス実態調査」の中で用いられている用語です。今、私たち民間の自称リハビリテーション事業者の在り方が問われています。
引用:令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業 (公的保険外・医療周辺サービス実態調査) 調査報告書、公益社団法人 日本医師会 日本医師会総合政策研究機構, 2020.
(以下の文中の引用も同上)
ー自費リハビリと自称リハビリの違いー
調査報告書では 自費リハビリと自称リハビリを区別するために、医療機関が行う保険外リハビリを自費リハビリ、民間事業者が行う保険外リハビリを自称リハビリとしています。
医療機関と民間の保険外リハビリを区別するための用語設定とは言え、自称リハビリを行っている私としてはなにか気持ちのいい表現ではありまえんね。
なぜか犯罪を犯した気にさえさせる表現です(笑)容疑者みたい…
ー自称リハビリがなぜ生まれたかー
自称リハビリが生まれた背景には、医療保険や介護保険の制約(制限)が一因として挙げられます。
病状や症状が固定される生活期と呼ばれる慢性期には、13単位制限と呼ばれる月内で行うことのできるリハビリの制限が設けられ、医療機関でのリハビリを積極的に受けることができなくなったのです。
そして、リハビリを受けることができないリハビリ難民を民間企業に投げたのは実は国であることも明記されています。
2010 年の経済産業省の報告書において、フィットネス事業者のリハビリ テーションへの参入が提案された。その後の「日本再興戦略」(2013 年)で、 医療機関から指示を受けた運動サービス等を創出することとされた。こうした背景が「自称リハ」の参入、増加を後押しした可能性がある。
経済産業省「医療産業研究会報告書」2010 年 6 月
現状:発症後、半年で医療保険でのリハビリは低減。退院後の在宅リハビリを支える体制が不十分。結局悪化して、入退院を繰り返すことになり、次第に身体機能が損なわれていく。
理想像:フィットネス事業者などが、退院後のリハビリを支える体制を充実させれ ば、退院後も身体機能の維持がしやすくなる。
ー自称リハビリの問題点ー
民間企業の参入が進むと締め付けを行おうとするのはどうかと思いますが、調査報告書の中で自称リハビリの問題点として挙げられているものは以下のようなものがあります。
- 「自称リハ」事業者の多くは「自費リハビリ」と称し、プログラム名に疾患名(脳梗塞、心疾患など)を冠しているところがある。
- 利用者にとって、医療なのか、福祉系のサービスなのか、一般的なサービスなのかわかりにくい。
- 「自称リハ」の中には、医師のリハビリテーションへの指示書の提示を推 奨しているところや、利用者が医療機関からの紹介で来店するなど、医療と 密接に連携しているところもあるが、その対極にあるようなところもある。
- 「自称リハ」について、医療本体との棲み分けや連携のあり方を明確にし、 また質の担保と利用者保護の観点から業界ガイドラインを策定することが求 められる。
この中で最も問題視されているであろう箇所は、医師の指示を得ているかどうかという点であると考えられます。私たちは、医師の指示なく理学療法士や作業療法士を名乗ることはできません。
医師の指示を頂いている弊社としては、ガイドラインの策定によって、事業者によって足並みの異なる「グレー」な部分を早急に解決して頂きたいと思っています。
ー自称リハビリは必要かー
最後に、自称リハビリの必要性について考えてみたいと思います。実は、医療機関の行う自費リハビリはそれほど広く普及していないのが現実です。
これはあくまで個人的な見解ですが、同法人内で医療保険と自費リハビリを併用することができないこと(混合診療に当たる)、自費リハビリの質の担保が難しいこと、保険でのリハビリを行う方が収益を安定させやすいことなどが考えられます。
自費リハビリが普及し、質を担保できれば我々の自称リハビリは不要となるでしょう。
しかし、現実には、保険内リハビリを受けている方からの自称リハビリの依頼が多く、保険内リハビリは効果が出ないと回数を減らしたり利用中止をされる方がいらっしゃいます。
私は、医療機関でのリハビリの質が担保されていない状況が続く限り、自称リハビリの需要は高まり続けると思います。
私たち民間企業や個人を叩くことでは根本的な解決策には至りません。まずは、保険内リハビリ、自費リハビリ、自称リハビリが一体となって「リハビリ業界全体の質」を底上げすることを考えることが先決だと思っています。